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第8回『すきや連』報告──京都「三嶋亭」 2011/3/8

2011 年 5 月 8 日 No Comment

 はや8回目となり、末広がりのめでたさにあやかりたいと、関西へ初進出し、旗振り役メンバーのお一人である京都随一の老舗、三嶋亭にて開催となった。当主の三嶌太郎さんは若手ながら、父君亡きあと、家業をますます盛んにされている方である。

 三嶋亭は明治6年創業で、三条通りと寺町通りが交差する角にあり、古風な門灯が目印の木造三階立ての建物は、京都の食の歴史遺産の代表である。

 今回も55名の参加者があり、関西陣はモリタ屋、和田金、牛銀、千成亭、近江牛の中川畜産、東日本からは今半本店、登起波、かとう、築地さとう、ニューオータニ岡半、常盤館、ちんや、浅草今半、牛や清、今朝、銀座吉澤などが出席。そして、お店の方総出のお迎えをうけ、玄関脇の階段を上って、二階の大広間を使用させていただいた。昭和7年の建築だけあって、木の階段や廊下みみごとにの磨き込まれ、広間の天井の照明器具の装飾は昭和の漆芸家・ 番浦省吾の木彫漆塗り。電気を消すと、あでやかな花柄がくっきりと浮き上がった。また、以前は畳に座卓のしつらえだったが、座卓と椅子式に直して現代の客のニーズに合わせているのがすばらしい。

 初めに、京都名産で、すき焼きにも用いられるお麩の老舗、江戸後期文化年間創業の「麩太」八代目・青木太兵衛さんの卓話があり、中国伝来の麩が京都に根付き、生麩と焼き麩が名産品になった経緯や、それぞれについて説明していただいた。青木さんの焼き麩の一種である楕円形の安平(あんぺい)麩は、三嶋亭のほか、東京のすき焼き店で使用するところもあり、一晩がかりで戻すとむっちりとした食感が楽しめる。肉はもちろんだが、麩をはじめとするさまざまな具、ザクが一つ鍋で寄り合っておいしさを奏でるのが、すき焼きという食べものの醍醐味なのである。

 三嶋亭では鍋が独特で、六角形の電熱器の上に同じ形の鉄鍋を乗せる。最初に白砂糖を雪のように撒いた上に牛肉を並べ、その上から醤油とみりんの割り下をかけて、味を調整しながら煮る──関西式と関東式をミックスしたようなこの店独自の方法である。それだけに、仲居さんの腕次第でおいしさが決まることになる。でも、誰もが注視するなか、仲居さんはあがることもなく、手際よく箸を使っていく。

  やがて、肉が煮え、その一枚を取り分けてもらったときのうれしさといったら、もう最高。緑の美しい青ねぎや三つ葉もよき彩りになっているし、お待ちかねの安平麩は、汁を吸ってぷっくり膨らんだところを頬ばると、思わず口が笑ってしまうおいしさ。

 当日は、拙著『食の街道を行く』がグルマン世界料理本大賞グランプリを受賞したとの知らせがパリから届いた直後でもあり、うれしさ倍増の京都の夜であった。入念にご準備いただいた三嶋亭さんに感謝いたします。

 献立は、
先付①このわた豆腐、 翡翠飴餡かけ(雲丹、鮑、木の芽)、②赤貝のぬた(酢味噌和え)、菜の花芥子和え、牛肉のたたき(ポンズゼリー)
牛肉すき焼  (宮城産牛)
ご飯   香の物
フルーツ 

 お約束の寄せ書きは全員のコメントがちんやほ住吉さんのブログで公開されていますのでご覧ください。その中の「八角机八角鍋の三嶋亭さんの縁起のすき焼きで口福になります」の言葉どおり、末広がりの八角の机と鍋は、京都ならではの素敵なおもてなしアイディアだと思う。

 なお、お開きのあとは祇園のお茶屋へ繰り出す方々もいて、大いに盛り上がり、夢のような会だったとうれしい感想をいただいた直後の3月11日、まさかの東日本大震災が起こった。

     すき焼きや寺町三条灯のともる       千恵子

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